カーリングで“大発見!!” 

カーリングで“大発見!!” 

 北京オリンピックのカーリング中継、我がロコ・ソラーレの大活躍を見ながら、「それにしても、“頭脳戦の要素一杯の”この面白い競技を誰が作りだしたのだろう?と疑問が湧いてきました。

 早速、ネット検索です。「カーリング・発祥」とキーワードを入れてクリックすると、“アッと驚く為五郎~、古っ!”「なんで、この絵がここに!?」とビックリ仰天。一枚の絵が掲載されているのですが、私のよく知っている、大変想い出深い絵なのです。ベルギーの画家、ピーテル(またはピーター)・ブリューゲルの「雪中の狩人」、解説を読んでまたビックリ。林の陰で狩りをする人々の遠景に「すでに氷上でカーリングを楽しむ人々が描かれている」とあります。カーリングは15世紀にスコットランドで発祥したとされていて、1565年に描かれたブリューゲルの絵にも登場していたという訳で納得しました。

 実は、私、この絵にはこれまでに2度、お目にかかっていて、偶然とはいえ驚きました。

「雪中の狩人」 ピーテル・ブリューゲル

 

 2017年の秋、オーケストラ勤務時代に知り合ったハーピストの野田千晶さんから「ハープと朗読のコンサートやりませんか?」と誘いがありました。同じ宝塚市在住という事もあって、彼女のマンションで打ち合わせ。中島みゆきの「時代」、五輪真弓の「恋人よ」など良く知られた曲を、野田さんの演奏をバックに私が歌詞を読むという、中々楽しいコンサート。最後に短編とそれに見合った曲を演奏しようと、彼女が気に入っている本を貸してくれました。辻邦生が、絵画から得たインスピレーションを短編小説にした「風の琴・24の絵の物語」という文庫本です。どれも興味深いのですが、中でも、雪国に育った男が何故、冬を憎むようになったかという、ちょっと不思議な「氷の鏡」が面白そうと取り上げました。短編の基になったのが、正にネット検索で出てきた、ピーテル・ブリューゲルの“カーリングの描かれた絵”「雪中の狩人」だったのですが、カーリングには全く気がつきませんでした。

 二度目の出会いは、2019年、ウィーン国立歌劇場でオペラを観るツアーに参加した時でした。あわせてニューイヤーコンサートで有名な、ウィーン楽友協会ホールで佐渡裕さん指揮のトーン・キュンストラー交響楽団のコンサートを聴くという音楽旅行でした。ニューイヤーコンサートは料金が高くて中々手が届きませんが、楽友会ホールは、一度は入ってみたい憧れの場所でした。素人の耳にも、今まで聴いた事のない、まろやかな独特の響きが感じられる得難い体験でした。

 ある日のスケジュールは、市内の美術史美術館見学。生憎の小雨でしたが、庭園の美しさと美術館の壮大さを堪能して館内に入り、幾つかの部屋をめぐるうちに、この絵に遭遇したのです。「雪中の狩人」はこの美術館の所蔵品でした。

 思わず「野田さん、あの絵に会いましたよ」と電話したい思いでした。ひときわ思い入れの強い絵だったので、しっかり見たのですが、この時もカーリングには気が付きませんでした。今、改めて本をとりだして拡大鏡で見てみると、確かに単なるスケートではない、何か競技をしている様子が描かれています。ひょっとすると、カーリングの世界では有名な絵だったのかも知れないと、徒然の日の偶然、“大発見”を楽しんでいます。

註:「風の琴・24の絵の物語」辻邦夫 文春文庫

関西テレビOB  出野徹之

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